ファクタリング基礎知識

ファクタリングって何?製造業社長が分かりやすく解説します

「ファクタリングって最近よく聞くけど、実際どうなん?」
「なんか怪しいイメージがあるし、手数料も高そう…」

こんにちは、埼玉県で自動車部品の町工場を経営している、田中です。

従業員18名、年商は3億弱。
どこにでもある、ごく普通の中小企業です。

正直なところ、私も数年前まではあなたと同じように思っていました。
銀行からお金を借りるのが当たり前で、ファクタリングなんて得体の知れないものには、手を出したらアカンと。

でも、ある大口受注がきっかけで、背に腹は代えられず利用することになったんです。
今回は、そんな私が実際にファクタリングとどう付き合ってきたのか、そのリアルな体験談をお話ししようと思います。

この記事を読めば、ファクタリングがどんな仕組みなのかはもちろん、どんな時に使えて、何に気をつけなあかんのか、現場の社長目線でご理解いただけるはずです。

ファクタリングとは何か?

まずは基本的なところから、サクッと説明しますね。
難しい言葉は使いません。
うちの現場の若い子に説明するつもりで話しますんで。

売掛金を現金化する仕組み

ファクタリングっていうのは、一言でいうと「まだ入金されていない請求書(売掛金)を、専門の会社に買い取ってもらって、すぐにお金に換える方法」のことです。

例えば、取引先に100万円の部品を納品したとします。
でも、入金されるのは2ヶ月後。
その間に、材料費や従業員の給料を払わなあかん。
手元の現金が足りん!…なんてことは、我々中小企業では日常茶飯事ですよね。

そんな時、ファクタリング会社にその100万円の請求書を買い取ってもらうんです。
手数料が引かれますが、最短だと即日とか数日で現金が手に入る。
これがファクタリングの基本的な仕組みです。

ファクタリングについてはこちらのリンク先の記事が参考になると思います。

銀行融資との違い

「それって、銀行からお金を借りるのと何が違うん?」と思いますよね。
これが全然違うんですわ。
一番の違いは、「借金」か「資産の売却」かという点です。

比較項目銀行融資ファクタリング
性質借金(負債が増える)債権の売買(資産の現金化)
審査対象自社の信用力・決算書売掛先(取引先)の信用力
スピード数週間〜1ヶ月以上最短即日〜数日
担保・保証人必要になることが多い原則不要
信用情報影響あり影響なし

銀行は「この会社に貸して、ちゃんと返せる体力があるか?」を見ます。
だから赤字決算やと、とたんに厳しくなる。

一方、ファクタリング会社が見るのは「この請求書は、本当に期日通り入金されるんか?」という点。
つまり、うちの会社の状況より、取引先がちゃんとした会社かどうかが重要なんです。
これは大きな違いですよね。

2社間・3社間ファクタリングの違いと特徴

ファクタリングには、大きく分けて2つのやり方があります。

1. 2社間ファクタリング
* うちの会社とファクタリング会社の2社だけで契約します。
* 取引先に知られずに資金調達できるのが最大のメリットです。
* その分、ファクタリング会社のリスクが高いので、手数料は高めになります。

2. 3社間ファクタリング
* うちの会社、ファクタリング会社、そして取引先の3社で契約します。
* 取引先に「請求書の支払先がファクタリング会社に変わりますよ」という承諾をもらう必要があります。
* 手間はかかりますが、ファクタリング会社が安心できるので、手数料はグッと安くなります。

うちみたいな下請けの製造業やと、やっぱり取引先に資金繰りのことを知られたくないのが本音。
だから、ほとんどの場合、2社間ファクタリングを選ぶことになると思います。

関連記事:2社間と3社間、どっちを選ぶ?実際に両方使った社長の本音

「怪しい」と思われがちな理由

なんでこんなに便利な仕組みが「怪しい」って思われるんでしょうか。
これにはちゃんと理由があります。

  • 法律のグレーゾーン: 貸金業法みたいに、手数料の上限をバシッと決める法律がまだないんです。だから、法外な手数料を取る業者がいても、すぐには罰せられない。
  • ヤミ金業者の参入: ファクタリングを装って、実質的には高金利の貸付を行う悪い奴らがいるんです。金融庁も注意喚起してます。
  • 情報が少ない: 実際に使った人の生の声が、まだまだ少ないんですよね。だから不安が先行してしまう。

こういう背景を知っておくだけでも、変な業者に引っかかるリスクは減らせると思います。

うちが初めてファクタリングを使った時の話

ここからは、私の実体験をお話しします。
今でこそ「選択肢の一つ」なんて偉そうに言ってますけど、最初はホンマに不安でした。

背景:急な大口受注と資金不足

あれは2022年の3月のことでした。
主要取引先から、1,200万円という、うちにとってはかなり大きな注文が入ったんです。
そりゃもう、めちゃくちゃ嬉しかったですよ。
従業員みんなで「よっしゃ!」って喜びました。

でも、喜びも束の間。
すぐに現実問題にぶち当たりました。
その部品を作るには、特殊な材料と外注加工が必要で、先に800万円ほどの現金が出ていく計算になったんです。

手元の現金はギリギリ。
支払いは2ヶ月後。
どう考えても資金がショートする。
血の気が引くって、こういうことを言うんやなと。

銀行融資では間に合わなかった現実

すぐにメインバンクに相談に行きました。
でも、担当者の答えは「追加融資ですね。審査に最低でも3週間はかかります」と。

3週間…。
それでは材料の発注が間に合わん!
このチャンスを逃したら、会社として大きな損失になる。
正直、その時は頭が真っ白になりました。

「どないしよう…。従業員の顔が浮かぶ。この仕事を断るなんて選択肢はない。でも、金が…」

まさに、そんな心境でした。

税理士からの提案と不安だった気持ち

万策尽きたと思って、顧問の税理士さんに泣きついたんです。
そしたら、「社長、ファクタリングという方法がありますよ」と。

聞いたことはありました。
でも、冒頭でお話ししたように、良いイメージは全くない。
「手数料がめちゃくちゃ高いんちゃいます?」「ヤミ金みたいなとこやったらどうしよう」「取引先にバレたら、信用なくすんちゃうか…」
不安な気持ちを、そのままぶつけました。

でも、税理士さんは冷静でした。
「もちろんリスクはあります。でも、今は機会損失の方が大きい。信頼できる業者を選べば大丈夫ですよ」と。
その言葉に、少しだけ背中を押されたんです。

実際に使ってみてどうだったか(手数料・スピード・安心感)

税理士さんに紹介してもらった中堅のファクタリング会社に、恐る恐る電話しました。
面談では汗だくになりましたよ(笑)。

結果として、売掛金の一部、600万円を買い取ってもらうことにしました。
提示された条件はこうです。

  • 手数料: 12%(72万円)
  • 入金スピード: 申し込みから3営業日後

手数料72万円。
正直、めちゃくちゃ痛い金額です。
でも、1,200万円の受注を逃す損失に比べたら…?
そう考えたら、もう「お願いします!」と言うしかありませんでした。

約束通り、3日後には会社の通帳に528万円が振り込まれていました。
あの時の安堵感は、今でも忘れられません。
「高いけど、早い。そして、チャンスを逃さずに済んだ」
これが、私の最初のリアルな感想です。

その後の活用と学んだこと

初回の経験から、ファクタリングは「使い方次第で強力な武器になる」と学びました。
それからは、緊急時に年3〜4回ほど、計画的に利用しています。

どんな時に使った?(大口受注・設備トラブル・賞与支払い前など)

うちがファクタリングを使ったのは、だいたいこんな場面です。

  • 急な大口受注で、先行投資が必要な時
  • 工場の機械が突然壊れて、急な修理費が必要になった時
  • 従業員の夏のボーナス支給前に、少しだけ現金が足りなかった時

どれも銀行融資を待っていたら間に合わない、「スピードが命」の場面ばかりです。

手数料を下げるためにやったこと

初回の手数料12%は、やっぱり高かった。
そこで、2回目以降は手数料を下げるために、いくつか行動しました。

  1. 相見積もりを取る: 必ず3社以上のファクタリング会社から見積もりを取るようにしました。これをやるだけで、競争が働いて手数料は下がります。
  2. 継続利用をアピールする: 「今回うまくいけば、今後も継続的にお願いしたい」と伝えることで、初回より良い条件を引き出せる場合があります。
  3. 必要書類を完璧に揃える: 決算書や取引先との契約書、請求書などをきっちり揃えることで、ファクタリング会社からの信用が上がり、手数料交渉がしやすくなります。

こうした努力の結果、今では8%〜10%程度の手数料で利用できるようになりました。

業者選びのポイントと注意点

これはホンマに重要なので、よく覚えておいてください。
変な業者に捕まったら、元も子もありません。

  • 契約書をちゃんと出してくれるか?: 当たり前ですが、契約内容を明記した「債権譲渡契約書」を交わしてくれるのは大前提です。控えも必ずもらいましょう。
  • 手数料が明確か?: 手数料以外に、登記費用だの出張費だの、よく分からん費用を後から請求してくる業者は要注意です。
  • 償還請求権がない(ノンリコース)か?: これは超重要です。もし取引先が倒産して売掛金が回収できなくなっても、その責任をうちが負わなくていい、というのが「ノンリコース」契約です。これがない契約は、ただの借金と変わりません。

契約で失敗しないために気をつけていること

契約書にサインする前は、どんなに急いでいても、必ず以下の点を確認します。
もう、指差し確認するぐらいの勢いで。

  1. 契約の種類は「債権譲渡契約」になっているか?
  2. 手数料と、それ以外にかかる費用は全て明記されているか?
  3. 「ノンリコース(償還請求権なし)」の文言は入っているか?
  4. 入金日と、こちらからの支払日(取引先からの入金日)は正確か?

この4つは、命綱やと思ってください。

ファクタリングは使うべきか?判断のポイント

「じゃあ、うちは使うべきなんやろか?」と悩む方もいると思います。
これは、会社の状況によって答えが変わります。

メリットとデメリットの整理

改めて、メリットとデメリットを整理してみましょう。

メリット 👍デメリット 👎
資金調達がとにかく早い手数料が融資より高い
赤字決算でも利用しやすい売掛金の範囲内でしか調達できない
借金ではない(信用情報に影響なし)悪質な業者が存在するリスク
担保・保証人が不要3社間だと取引先の承諾が必要

この表を眺めながら、「うちにとって、今はどっちの重みが大きいか?」を天秤にかけるのが大事です。

こんなケースなら向いている/向いていない

【向いているケース】
✅ とにかく急いで運転資金が必要
✅ 銀行融資を断られた、または時間がかかりすぎる
✅ 近いうちに入金予定の大きな売掛金がある
✅ 決算内容に自信がなく、融資審査が不安

【向いていないケース】
❌ 資金調達を急いでいない
❌ 手数料コストを何よりも安く抑えたい
❌ そもそも売却できる売掛金がない
❌ 恒常的に資金が不足している(根本的な経営改善が必要)

銀行融資・ビジネスローンとの比較

ファクタリングは、あくまで資金調達の一つの選択肢です。
時間的な余裕があるなら、金利の低い銀行融資が一番なのは間違いありません。
銀行がダメでも、ノンバンクのビジネスローンという手もあります。

それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、その時の状況に合わせて最適なものを選ぶ
この視点が、経営者には必要なんやと思います。

「うちの場合はどうか?」と考える視点

最終的には、「手数料を払ってでも、このチャンスを掴むべきか?」「このピンチを乗り切る価値があるか?」を判断することになります。
これは、社長であるあなたにしか決められません。
会社の未来を考えて、冷静に、でも時には大胆に決断する必要があります。

実際に使って感じた、ファクタリングのリアルな印象

最後に、私が実際に何度も使ってきて感じている、偽らざる本音をお話しします。

手数料は高い?それでも使う理由

高いです。
これは間違いありません。
入金されたお金から手数料が引かれるのを見ると、毎回「うっ…」となります(笑)。

でも、そのお金で得られる時間と機会には、代えがたい価値があるんです。
あの時、もしファクタリングを使わずに大口受注を逃していたら…と思うと、ゾッとします。
従業員の給料を遅らせるなんて、絶対にできません。
手数料は、そのための「保険料」や「特急券」のようなものだと、私は割り切っています。

取引先にバレないか?の不安と現実

2社間ファクタリングを使っている限り、取引先にバレたことは一度もありません。
優良なファクタリング会社は、そのへんの守秘義務は徹底してくれます。

ただし、一つだけ注意点が。
それは、取引先から入金されたお金を、期日通りにファクタリング会社へ支払うことです。
これを万が一使い込んでしまったりすると、ファクタリング会社は取引先に直接連絡します。
そうなったら、一発でバレて信用問題になります。
当たり前のことですが、ここだけは絶対に守らなあかんルールです。

怪しい業者を避けるにはどうしたらええか

結局のところ、「焦らないこと」「ちゃんと調べること」に尽きます。
資金繰りに困っていると、どうしても視野が狭くなりがちです。
「すぐにお金になりますよ!」という甘い言葉に飛びつきたくなる。

でも、そんな時こそ一呼吸おいてください。
ネットで会社の評判を調べたり、複数の会社を比較したりする。
それだけで、リスクは大幅に減らせます。
まあ、そんなもんです。

正直、使うのに勇気はいったけど──今では選択肢の一つ

初めて使う時は、本当に勇気がいりました。
「経営者として失格やないか」なんて、自分を責めたりもしました。

でも、今は違います。
ファクタリングは、うちのような中小企業が、厳しい時代を生き抜くための有効な「選択肢の一つ」だと確信しています。
知っているのと知らないのとでは、いざという時の対応力が全く変わってきます。

まとめ

長々と書いてしまいましたが、私の経験から言えることをまとめます。

  • ファクタリングは「請求書の前払いサービス」。借金とは違う。
  • 最大のメリットは「スピード」。最大のデメリットは「手数料の高さ」。
  • 業者選びが何より重要。「ノンリコース」と「契約書」は必ず確認する。
  • 「最後の手段」ではなく、時間と機会を買うための「戦略的な選択肢」と考える。

この記事が、かつての私のように、一人で資金繰りに悩んでいる社長さんの元に届いてくれたら、こんなに嬉しいことはありません。
「知ってる」と「使ったことがある」には、天と地ほどの差があります。

もし、何か質問があれば、遠慮なくコメント欄に書いてください。
同じようにファクタリングを使ったことがある社長さんの体験談なんかも聞かせてもらえると、私も勉強になります。

お互い、厳しい状況ですけど、知恵を出し合って頑張っていきましょうや。